Albert Marque Doll Maker

Albert Marque アルベール・マルク (1872-1939)

このお人形は、彫刻家アルベール=マルクが作った人形として大変有名ですが、もう一人重要な人物が存在します。この人物が『マルク』を作ったと言っても過言ではないでしょう・・・その人物の名前は、マルゲンヌ=ラクロワ。

マルゲンヌ=ラクロワは、当時(20世紀初期)の今で言うトップデザイナーでした。現在のパリオペラ、ギャラリーラファイエット前に大きな店を構えていた売れっ子クチュリエだったのです。顧客には著名人やブルジョワの奥様方、そしてシアターの舞台衣装なども手がけていました。ラクロワの名前は広く知られていました。

一方アルベール=マルクも有名でした。政府の依頼で美術館や学校、公園など公共の機関に彫刻を作っていました。主に子供や親子、妊婦、女性を得意としていたようです。当時の売れっ子彫刻家でした。

・・・1915年、時は世界第一次大戦の最中です。
終わるとおもっていた戦争は収まらず、長引くようになって行きます。男性たちが戦争に駆り出され、残った女性と子供たちは行き場を失いつつありました。マルゲンヌ=ラクロワはこの頃、女性たちの困難な生活の助けになる様にと、ドレス作りの職を与えたり、子供たちの笑顔を取り戻す為に人形や玩具を作ろうと考えます。

その頃(1910年以降)のフランス人形メーカーは、ドイツ人形メーカーの脅威で仕事が少なくなっていました。ドイツとの戦争の中ラクロワは、フランス人形の復活を願ったのかもしれません。
既にクチュリエとして有名で裕福であったラクロワは、戦争という困難な状況のフランス人の為に、仕事と希望を与えたいと思いました。

人形作りを誰に依頼するか・・・当時の彫刻家アルベール=マルクに白羽の矢があたったのです。彼も戦争で彫刻の依頼もなくなっていた頃です。マルクも快くこの仕事を引き受けます。100体の注文で人形は作られました。

モデルはラクロワが選んだ、おしゃまな女の子「シャルロット」。彼女をモデルに作られました。そして衣装は、全てラクロワが手がけました。一体一体、全て違う衣装です。ラクロワは、40体に王族、王妃の衣装、またフランスの各地方の伝統的な衣装を着せました。その他の人形も、それぞれ素敵な衣装を着ています。

1915年11月、アメリカのニューヨークタイムズ紙に、こんな記事が掲載されました・・・
「フランスは戦争で苦しんでいる。フランス人を少しでも助ける為にアメリカ人である私たちが出来る事・・・・アメリカの裕福層は、アメリカの子供たちに、フランス人形を買ってあげよう! ドイツを倒し、フランスを助けるために!」

・・・なんという事でしょう!!

こうして、アメリカの美術館が先の衣装の40体を全て買い取り、また裕福なアメリカ人はフランスへ行き、ラクロワの店でマルクの人形を購入したそうです。こうして多くの人形はアメリカへ渡って行ったのです。クリスマス前には、100体の人形全てがソルドアウトになりました。

デザイナーのラクロワと彫刻家のマルク、そして第一次世界大戦という歴史の中で生まれた人形・・・それが『マルク』なのです。

マルクの人形の瞳は、約70%がブルーアイで、約30%がブラウンアイです。そして全ての衣装はラクロワが作り、そのタグが付けられました。足の裏には、人形のナンバリングと、どんな衣装を着ているかが記されています。

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French sculptor, made dolls in the early 1900s. All Marque dolls were 22 inch tall and all were made from the same mold with the same body. Albert Marque dolls are the rarest in the world.