Biscuit

ルイ16世とマリー・アントワネットの 長男誕生を 盛大に祝うため、セーヴル窯は彫刻家 パジューに作品を依頼した… しかし、この大きな物語の裏には、小さな 物語が隠されている。
 
フランス王太子誕生は、王朝の継続性 を保証するものであり、そのたびに最大限の 注目を集め、時にはかなりの期間待ち望ま れる。ルイ16世とマリー・アントワネットの 長男、ルイ・ジョゼフの場合もそうだった。両親の 結婚から11年後、姉の皇女マダム・ロワイヤル の誕生から3年後に、ようやく生まれた。 セーヴル磁器工場は、ダンジヴィリエ伯爵の鋭敏 な指揮の下、王室の出来事を予期して いた。彼らは、イルカのモチーフを取り入れた 新しいデザインや形状を考案し、後 に国王がプロイセンのハインリヒ王子に 贈呈することになる「イルカの庭の花瓶」(現在 はルーブル美術館の所蔵)などを制作した著名 な芸術家に制作を依頼した。国王の彫刻家 であり、王立絵画彫刻アカデミーの会員 でもあったオーギュスタン・パジューは、素焼き 磁器の製造を目的とした模型の製作を依頼され た。
 
彼は海洋モチーフから着想を得た群像を 構想した。それは、絡み合った3頭のイルカの上に 座り、幼い子供を腕に抱き、皆に見せる裸の女性像(とはいえ、布で覆われている) である。寓意は明白だが、物語はそこで 終わらない。芸術家は、ヴィーナスの顔に女王の 特徴を与え、布に百合の紋章を刻むという アイデアを思いついた。これは、二重の不敬行為であったため、パジューは作品を 修正せざるを得ず、裸の女性として登場でき ないため、「女王に似ないように」容姿を 変え、百合の紋章を取り除いた。この素焼きの 磁器像は、より慎み深く、判別しにくい姿で 展示されている。
 
※セーヴル王立製陶所、ドーファンの誕生の 寓意、オーギュスタン・パジュー(1730-1809)の モデルに基づく、1782年頃、 高さ41cm。
 
※※「ビスク」はフランス語で「ビスキュイ」と言い、こう呼ばれる磁器は、釉薬をかけずに焼成された磁器で、18世紀のフランス・セーヴル窯などで盛んに作られました。白くマットな質感が特徴で、彫刻的な美しさを強調するために用いられました。